光の蔵


正面ファサード
正面ファサード

生方記念文庫プロポーザル

     計画地  :群馬県

     用途   :コミュニティー施設、記念館

     延床面積 :510㎡

     構造・階数:木造・地上2階

南面より
南面より

 敷地は群馬県沼田市の中心部、上州真田氏が居城

とした沼田城にも近く、今も往時の町割りを色濃く

残す、城下町の一角であった。 

 旧沼田貯蓄銀行(群馬県指定重要文化財)をコ

ミュニティ施設として再整備・移設する計画と、

歌人・生方たつゑの記念館を建て替え、新築すると

いう2つの計画を一つの敷地に配置する複合的計画

である。旧沼田貯蓄銀行は明治41年ごろに建てられ

た木造擬洋風建築物であり、利根・沼田の金融史を

語る上では貴重な文化財である。また、旧生方記念

文庫も、生方たつゑの著書、詩歌関連書を収集した

記念館であり、建築家・林雅子氏が設計した瀟洒な

建築であった。

俯瞰
俯瞰

 この2つの計画を複合的に組み合わせ、まちなかの

文化施設として再整備し、にぎわいの創出に寄与する

施設が求められた。また、今回計画は、区画整理事業

が行われている中での計画であり、今後の都市整備の

デザインコードとしての役割も期待されていた。

 

 そこで、重要文化財である建物も保存、展示のみの

利用ではなく、集会施設等に活用できるよう、新築記

念館と接続した計画とし、地域のコミュニティに寄与

できる複合施設として提案した。

 

WINTER GARDEN
WINTER GARDEN

 2つの建築を接続するとともに、その2つの建築の

間に広場を設けた。市民の方々、また観光に来られた

方々が憩うことのできるスペースとし、冬季の雪を考

慮し、ガラス屋根で覆った広場’WINTER GARDEN'

とした。

 

  旧記念館は生方家の蔵を改修した建築であった。

重厚なたたずまいの中にも、女性建築家らしい、

やわらかな光が天井から降り注いでいた。

光の蔵
光の蔵

  その旧記念館のイメージを踏襲し、新記念館は

木造斜交格子構造による蔵を計画し、’光の蔵’と名

付けた。美術品を収蔵する空間ではあるものの、旧

態なホワイト・ボックスではなく、鋭利なひし形ガ

ラス・カーテンウォールから光を導き、風景を切り

取ってみせる空間とした。それはあたかも薄刃のナ

イフのような言葉によって上州の風景を切り取った、

たつゑの見ていた風景を表象する空間の表現であり、

展示物を印象的に鑑賞できる場として計画した。

 

 

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