八幡浜港地域交流拠点施設
トイレ棟デザインコンペ
計画地 :愛媛県八幡浜市
用途 :トイレ
延床面積 :158㎡
構造・階数:RC造 地上1階
計画地は愛媛県の西端、「四国の西の玄関
口」とも呼ばれている八幡浜港の一角を埋め
立てた、広大な土地の一部であった。
そこに、海産物直売所や物産販売施設などを
建設し、その施設群に付属するトイレ棟の提
案がもとめられた。
「道の駅」のトイレ棟の計画である。
八幡浜市はみかんとさかなの街であり、計画
地もまさにフェリー港やみかんの段々畑が一望
できる、街の景観を体感できる場所であった。
この地では「伊予の青石」とよばれる緑泥片
岩が昔から多く産出され、護岸整備やみかんの
段々畑の造成などに使われており、地域の景観
の重要な一つのエレメントとなっていた。
また、この地は明治期には紡績業も盛んであ
り、赤レンガの工場群が今も往時の面影を残し
ている。四国ではじめて電灯によって明りが灯
された地も、この八幡浜の紡績工場であった。
都市は織物に似ている、とよく言われている。織物は様々な糸が複雑に絡み合いながらも一つのまとまりを構成し、文様を織りなしている。都市も建築物のみならず歴史や文化などいろいろな要素が絡み合いながら、複雑でいてしかも独自性のあるコンテクストを生み出している。今回計画地の埋め立て地とは、このような歴史からある意味、接点を持たずして生み出された土地であり、真っ白なテキスタイルのように感じられた。
そのような場所には、街の記憶を形とかモノ
ではなく、コト・物語として織り込むことによ
って、街のコンテクストの一部とすることが必
要であり、それを具現化する建築デザインがふ
さわしいのではないか、と感じられた。
四国で初めて灯された光、その光とはどのようなものであったのだろうか?
きっと、その光の元には、大勢の人が集まり、驚きとともに未来への希望を抱いて見つめていたのではないだろうか?
今回計画はそのような八幡浜の「歴史の光」をコンセプトとし、大勢の人とモノが集まり、人と人を紡ぐ新しい場所の、「未来の光」としての建築を提案した。